ラーメンを作る職人が青木亭ならば、その食材を作る側もいわば職人。試行錯誤を繰り返し、ついにたどりついた青木亭の味。青木亭の代名詞とも言われる熟成チャーシュー。青木亭を創業当時から支え続ける豚肉職人が、青木亭のチャーシューを語る。

第三弾
麺上げ職人×豚肉職人





青木亭は、職人の麺上げや調理技術だけではなく
その素材にも、とことんこだわって一杯のラーメンを作っている。
青木亭のラーメンを作る人間が職人であれば、そのラーメンに使う、
様々な厳選された食材を生産する方々もいわば職人。
青木亭のラーメンを構成する様々な食材たち。
様々な努力、試行錯誤を重ね、すばらしい食材に育て上げた
生産者の話をお伝えしよう。

青木亭「熟成チャーシュー」誕生秘話


青木亭の重要なパートナーである精肉販売会社社長の話を交え、青木亭の熟成チャーシュー誕生秘話から、生産者
として立場で極上の素材の維持に尽力する影の職人たちにスポットライトを当て、青木亭のチャーシューの秘密に迫る!

<関係者の話>


青木亭のチャーシューは、豚の様々な部位の中でも一番旨味が凝縮した肩ロースのみを使用しています。当社は年間約60トンという青木亭の使用量に対応し、尚かつ、青木亭のラーメンの本筋である、「コクがあってあっさり」としたスープを出すために良質な豚肉を仕入れる必要がありました。当初、青木亭の由来にもなった初代店長の青木店長(現川口店店長)から「コクがあるのにあっさりとしたスープを作りたいんだ」というご相談をいただきました。「コクがあってあっさり?」当社も長年精肉卸しとしての仕事で様々なラーメン店や他業種に肉を提供してまいりましたが、その言葉をいただいた時、一瞬戸惑いました。未だ味わった事もい、スープですし、どこ産のどの品種というオーダーではなく、全くの一からのスタートです。私もスープ製作までは携わった経験がなかったものですから(苦笑)。まずは、日本で有名な良質と言われる豚肉を片っ端から仕入れてご提供しました。これじゃない。これじゃないと毎日スープ作りに明け暮れる日々。国産の有名な豚だと、その良質さ故、主張が強く、良質なコクは出せても、後味のあっさりとした味は望めませんでした。それでいていずれ年間約60トンになるという使用量も考えなければいけなく、国産のブランド肉で安定的にその量を確保するのは難しい課題でした。在庫を確保する故に、冷凍などの保存も考えなければなりません。しかし冷凍肉だとスープを作る上でドリップ(灰汁)が多く、肉の臭みも増します。そうすると、やはりチルドの生の肉しかありません。生の良質な豚肉で安定的に供給できる豚肉。その中でも豚一頭から取れる量が限られる肩ロースですからね。毎日途方に暮れる日々でした。

こっさりスープの誕生

依頼を受けてから数ヶ月後、私の知り合いが、日本よりも畜産が盛んな海外のある地域で、日本と同じ生産方法を取り入れ育てている豚がある事を知りました。山の麓に面した広大な自然の中で、日本式畜産で育てている麦豚です。さっそく生産元に連絡を入れ、1ヶ月後にその豚肉が到着しました。青木店長にその豚肉をお渡しし、スープ作りを行ってもらいました。数日後、青木店長から嬉しい連絡がありました。「これだよこれ!俺が求めたスープがこの肉でやっと出来たよ!」

広大な大自然で育った豚が、一ヶ月の時をへて熟成

私は、苦労のかいがあったと嬉しさと同時に安堵しました。日本の一般消費者は海外産と聞くとあまり良いイメージがないようですが私どもの見つけた豚肉は、日本よりも国土が広く自然に恵まれた地域で、尚かつ日本よりも畜産の歴史が古く、経験が深い畜産農家です。そんな畜産農家がなぜ日本式畜産を取り入れているか?というと、かの地は日本よりも消費量が多く子豚を速く成長させる為に、どうしてもサイクルを早める必要があります。そうすると、いくら広大な大自然で育った豚でも、身と脂の質がよくありません。せっかくの大自然の地のりを活かしきれていませんでした。その中で日本のある精肉商社が日本に輸出する為だけに日本のブランド豚を育てる畜産方式を取り入れを提案し、いわば逆輸入という形で現在に至ります。土地が広く、従事する生産者の数も多いので、多くの豚を育てる事ができるのです。産地から日本へ、1ヶ月かけて船で輸送される間にチルド保存された生の豚肉はほどよく熟成され、青木亭で調理される時は身もしまって脂にもコクが出る最高の状態の肉質に仕上がっています。

他では味わえないスープとチャーシュー

この豚肉は正直、高価なものなのでラーメン店で使用している店は他にないかと。ラーメン店では青木亭様だけにしか卸しておりません。青木亭様からの妥協のない要望がなかったら知る事がなかったかもしれない豚肉ですから、青木亭様との契約しかしておりません。私どもも長らく精肉卸しに携わっておりますが、青木亭様のラーメンの基になるスープ作りをご一緒できて貴重な経験です。ありがとうございました。